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平成19年3月25日「私の出会った本」掲載
【路傍の石】 著:山本有三
小学生の頃、父が一冊の本を私に買ってくれた。
それがこの「路傍の石」だった。
まだ幼い私には「路傍」という言葉の意味すらわからなかったが、なんとなく読んではみたものの、まるで面白くない。
何が言いたいのかもよくわからない。
ただ淡々と地味な暗い日々が続き、少年吾一が成長していく過程が描かれているだけなのだ。
納得のいかない私は「面白くないのも、何が言いたいかわからないのも、自分の読み方が悪いのだ」と何度もこの本を読み返した。
そして繰り返し読み重ねるうちに、いつしか私は主人公「吾一」になりきっていた。
一銭しか持たずに焼き芋を買いに行き恥ずかしかったこと、中学に行けなくて悔しかったことなどが、まるで実際に経験したことのように思われ「どうして私ばかり…」と、何度も涙ぐんだ。
そして、吾一が励まされた「艱難汝を玉にす」と言う言葉も、「カンナンナンジヲタマニス」と呪文のように繰り返し、言葉の意味を知るにつれ「辛いことや苦しいことも、自分を磨いてくれるんだなぁ」と、自然と思えるようになってきた。
また皮肉にも、その後どんな本を読んでも面白く感じるようになり、読書が習慣化してしまったことも、思えばこの本のおかげなのかもしれない。
ところで今回、この原稿を書くにあたり本書を再読してみたのだが、さすが名作、幼い時には理解できなかった深い感動を味わうことができた。
そして驚いたのは、吾一の物の考え方、見方が今の私にそっくりであることだった。
幼い頃の読書が、人間形成に大きな影響を与えることを再確認すると共に、知らず知らずに、この本から大切なことをたくさん学んでいたことに心から感謝した。
そして、この一冊の本を私に与えてくれた、今は亡き父にも。
日時: 2007年03月29日 11:01
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